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dr403 あきらめが肝心

アレフ。はじめにしょうゆさしがあった。大体において、世の中のしょうゆさしは使いやすいものと使いにくいものに2分される。僕がいままで生きてきた中で、つかいにくいしょうゆさしの大部分は、料理にしょうゆをかけたあとで、しょうゆが垂れて、テーブルにしょうゆの輪ができた。言い換えれば、輪のできないしょうゆさしは使いやすいともいえる。けれど、そんなしょうゆさしに出会うことはめったにないのが難点である。だから、僕はそれを大胆な方法で解決することにした。しょうゆをしょうゆさしに入れなければいいのだ。この方法はたいそう具合がよかった。しょうゆさしを使ったあとにできるしょうゆの輪が無くなったのだから、効果は100%である。たったひとつの難点は、しょうゆを入れる容器を何にするか、ということだ。そこで僕は考えた。もはやしょうゆをしょうゆの容器にいれてはいけないのであれば、なにか似たものの入っていた容器にいれればよいのである。適当なものはすぐに見つかった。手ごろなサイズのめんつゆの容器が、偶然にも、空いて洗われて置かれていたのだ。だから、うちのしょうゆはめんつゆの容器に入れられることとなった。

たまたまいつもと違っためんつゆを使ってみたこともあるが、ふだんは決まったものをつかっている。そのまま出汁しょうゆとして冷奴にかけてもよいし、4倍に希釈すると冷麦や蕎麦のつゆになる。8倍では煮込みうどんの汁になると書かれているし、12倍では吸い物や正月のぞうにに使えるのだそうだ。なお、鶏のからあげは揚げる前にひたしておく、と書かれているのだが、自分で揚げたことはない。こんな便利なものがなんとお得にも1升のペットボトルに入っているのだ。比重を1として、2キロ弱。ちょっとばかり重いのが難点であることに気づき、僕はそれを大胆な方法で解決することにした。めんつゆも別の容器にいれればよいのだ。たまたまそこにあったのは、しょうゆさしとポン酢のあき瓶であった。ここでしょうゆさしを使用するという選択肢は、残念ながら僕には許されていなかった。なぜならめんつゆの輪は、しょうゆの輪と同じくらい腹立たしいものだからである。だから、うちのめんつゆはポン酢の容器に入れられることとなった。

ポン酢はとても美味しい。程よい酸味があり、鍋物にも使えれば、青菜のお浸しにかけてもいい。さらには、その酸味のゆえにかけすぎを防いで、減塩効果さえあるという。だから安心してじゃぶじゃぶかけることができる。幸せってなんだっけ、なんだっけ、なんていうCMが昔あったけれど、僕にとってポン酢はやっぱり必需品なのだ。もしこんな便利で美味しいものが売られていなければ、僕は途方にくれてしまうだろう。そうなったら、自分でポン酢を作るしかない。作るしかないならばやってみようと、試してみたことがある。これが案外うまくいった。作り方は簡単で、黒酢とめんつゆを好みの割合で混ぜるだけだ。めんつゆには適度なうまみと甘みがあるので、2杯酢や3杯酢として使うこともできる。柑橘類の果汁を使えば本物のポン酢になって、もっと美味しくなるかもしれないが、この手間と値段でこの美味しさなら、なにも文句はあるまい。ただ問題なのは、その入れ物である。僕はそれを大胆な方法で解決することにした。自分でポン酢をあわせるときの原料の黒酢の瓶を、そのまま流用することにしたのだ。これだと、酢が瓶の半分くらいになった中に、めんつゆをどぼどぼとそそぎ、蓋をしてからよく振るだけでよい。この際にきちんと蓋を閉めないと、大変なことになってしまうから気をつけなければならない。こうして、うちのポン酢は黒酢の容器に入れられることとなった。

僕はあんがい酢好きである。その証拠に、いま数えてみたら中身の入った酢の瓶が3本もあった。1本は普通の黒酢の入ったもの。黒酢といってもせいぜい麦茶ていどの色であって、さほど黒いわけではない。色をみれば黒酢なのか、ポン酢なのかは一目瞭然である。すくなくとも僕にとっては。この瓶は、ポン酢の入っている黒酢のびんとはまた違うメーカーのものだから、なおさら間違える心配などない。もう1本はしょうゆのようにまっくろな酢である。中国かどこかの製品で、瓶には香醋と書かれている。なんだかどろどろした感じの見た目で、いたんでいるんじゃないかと心配になるのだが、なめてみたらやはり酸っぱくなっていた。でもこれはもともと酢だから区別がつかない。だから、たまに料理の香り付けなどに使っている。もう一本はりんご酢である。最近、夜でも蒸し暑く、冷たい飲みものが欲しくなる。そんな時に、いちいち外の自販機でジュースを買ってくるのはなんだか面倒で、僕はそれを大胆な方法で解決することにした。酢を水でうすめて氷を入れて飲んでみたのである。あにはからんや、案外これがいける。健康にもよさそうな気がするし、小遣い銭の節約にもなる。良いことづくめではないか。ただ、普通の黒酢だとまだ喉がぴりぴりする気がするので、飲用のためにわざわざりんご酢なるものを買ってみたのだ。見た目は普通の酢と同じなのだが、瓶に描かれたりんごの絵のせいか、味が自然でまろやかな気がする。

以上をまとめてみると、こうなる。うちの食卓には、黒い液体の入った瓶は4本ある。瓶はめんつゆとポン酢と黒酢と香醋。中身はしょうゆとめんつゆとポン酢と香醋。別に黒酢も存在している。いかにも酢然としたりんご酢もある。そんなわけで、はじめてあそびにきた他人にとって、うちの食卓の調味料は、かなりわかりにくいのだそうだ。自分ではもう慣れてしまっているから、たいして間違えることもない。たまに間違えても大したことはない。むしろこういったものが人生の味付けなのだと笑い飛ばせばいい。すっぱい失敗。

(2004.07.27)
by shinakaji | 2004-07-28 02:50 | essay


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